茨城県大洗町がアニメの聖地となっているのをご存知でしょうか?
大洗といえば、海水浴場か水族館のイメージしかなかった人がほとんどだと思います。
実際に大洗の浜辺には、毎年60万人もの海水浴客が訪れ、茨城県内でもダントツの海水浴場となっています。
ところが、2012年に「ガールズ&パンツァー」という大洗町が舞台のアニメが放送されたことをきっかけとして、大洗は海水浴場と水族館だけの町ではなくなってしまったのです。
「ガルパンの聖地」として一気にブレイクしてしまったのです。
2012年を境に一気に観光客が増えた大洗町
2018年に茨城県が提供した資料によりますと、大洗町には年間4,531,000人の観光客が訪れており、茨城県内で堂々の1位になっています。
ちなみに、2位のつくば市が4,217,000人で、3位のひたちなか市は3,922,000人です。
つくば市には筑波山やつくばエキスポセンター、筑波宇宙センターなど見どころがたくさんありますし、ひたちなか市にも国営ひたち海浜公園がありますので、観光客数が多いのはなんとなく分かります。
それに対して、海水浴場とアクアワールドくらいしか観光客を呼び込める施設のない大洗町が堂々の1位というのは驚きです。
しかも、この大洗町の観光客数は、2012年を境としてあきらかに増えているのです。
2011年の大洗町の観光客数が2,975,000人だったのに対して、2012年には4,078,400人に一気に増えています。
翌2013年には4,286,900人とさらに増えています。
これは、大洗が「ガルパンの聖地」となったことが影響をしていることは間違いありません。
しかも、この「ガルパンの聖地」と化した大洗町のすごいところは、アニメの放送が2013年3月に終了したあとも、観光客の数がまったく減らないというところです。
2014年の観光客数が4,323,900人、2015年が4,441,400人、2016年が4,544,700人と、減るどころかむしろじわじわと増えています。
一時的なブームに終わることなく、長年にわたってアニメの聖地としての地位を保ち続けているのです。
アニメの聖地と呼ばれたところは全国にたくさんありますが、その多くはブームが去るとまったく注目されなくなってしまいます。
これほど長い間にわたって、アニメファンが巡礼に訪れる聖地は非常に稀であるといえます。
ガルパン効果で万年赤字の鹿島臨海鉄道が黒字化!
野村総研によりますと、2013年~2014年にかけてのガルパンによる経済効果は7億円にもなるそうです。
大洗町には鹿島臨海鉄道大洗鹿島線というローカル線が走っていますが、万年赤字だったこの路線がガルパンのおかげでなんと黒字化してしまったのです。
また、2015年に大洗町がふるさと納税の返礼品に「ガルパン関連商品」を追加すると、納税者が殺到しました。
前年度の大洗町のふるさと納税額がたった763万円だったのに対して、2015年には1億6千万円以上にもなりました。
大洗町にしてみれば、まさにガルパン様様といったところでしょう。
そもそもなぜ「ガールズ&パンツァー」は大洗が舞台となったのか?
全国には1741もの自治体があるにもかかわらず、なぜ「ガールズ&パンツァー」は大洗を舞台として制作されることになったのでしょうか。
事の発端は、東関東大震災後の2011年秋に、アニメの制作会社であるバンダイビジュアルから大洗を舞台にしたアニメを作りたいという話があったことです。
近年のアニメでは、架空の町を舞台にした作品よりも、実際に存在する街を背景にして作品を仕上げる、いわゆるご当地アニメが増えてきています。
まさに「ガールズ&パンツァー」もそうした流れのなかで制作がすすめられることになったわけです。
いくつかの候補地があった中から、フェリーターミナルや大洗磯前神社、マリンタワー、水族館、商店街といった観光施設が狭い範囲にまとまっている大洗に白羽の矢が立ったわけです。
大洗町は東関東大震災の被災地でもあり、津波の被害や原発の風評被害などによって、これまで年間で60万人ほど来ていた海水浴客も14万人にまで減ってしまっていました。
商店街も閑古鳥が鳴くような状態になってしまい、危機感を感じていた大洗町にとって、ガルパンの話が持ちかけられたことは、まさに渡りに船だったわけです。
アニメの聖地として大洗が愛され続ける理由
アニメの聖地と呼ばれるところは全国にたくさんありますが、そんな中でも「ガルパンの聖地」である大洗町はアニメファンに圧倒的な人気となっています。
一時的なブームで終わってしまうアニメの聖地が多い中で、なぜ大洗はこれほどまで長きにわたってファンから支持されているのでしょうか?
一番の要因として考えられるのは、地元商工会を中心として町ぐるみでガルパンを盛り上げているという点です。
ブレイクのきっかけとなったのは、「大洗あんこう祭」です。
「大洗あんこう祭」は、茨城県の冬の味覚の1つであるアンコウをアピールするたに、1998年から開催され続けているイベントです。
2012年の11月に行われた「大洗あんこう祭」では、ガルパンの声優たちを招いてのトークショーを行ったり、ガルパンとコラボしたご当地商品を販売したりするなど、さまざまなガルパンがらみの企画が実施されました。
それに合わせて、茨城交通のバスや大洗鹿島線の列車をガルパンのキャラクターでラッピングして大勢のファンを出迎えました。
当日の大洗駅は、駅を開設して以来の入場制限となってしまったそうです。
この年の「大洗あんこう祭」には、ガルパン効果で前年度の約2倍にあたる6万人もの人が会場に押し掛けました。
その後も、大洗町ではガルパンのスタンプラリーを実施したり、商店街にガルパンに登場するキャラクターの等身大パネルを設置したりして、積極的にアニメオタクたちを町に呼び込む施策を実施しました。
スタンプラリーの設置場所の1つである大洗磯前神社には、全国から集まったガルパンファンの絵馬が大量にかけられています。
こうした地元の人たちの努力もあって、大洗は「ガルパンの聖地」としてずっとファンの心をつなぎとめることができるようになったわけです。
文:護持八平