茨城弁は長音と省略を活用して口の動きを効率化する優れた言語

水戸の偕楽園にある好文亭の門 茨城弁の使い方

茨城弁では、言葉のなかにやたらと長音が登場します。

たとえば、「おもしろい」を茨城弁にすると「おもしー」になります。

「耳が痛い」だと、「みみーいでー」と長音が2回も登場します。

実際にこうした長音を使って話をしてみると分かりますが、口の動きが最小限で済むのでとても話しやすいのです。

実は、茨城弁というのはとても効率化された発音を持つ優れた言語なのかも知れません。

茨城弁は助詞を省略して主語を長音で伸ばします~「はーいでー」

歯が痛いを茨城弁で話す男性茨城弁では助詞が省略されて長音に置き換わることが多いです。

助詞というのは、言葉に意味を肉付けするための品詞で、「が」とか「を」などが該当します。

助詞が長音に置き換わる茨城弁をいくつか紹介してみましょう。

先ほど「耳が痛い」の例を紹介しましたが、このパターンは「耳」が「歯」に変わっても「手」に変わってもまったく同じです。

「歯が痛い」は「はーいでー」ですし、「手が痛い」は「てーいでー」となります。

同様に「腰が痛い」→「こしーいでー」、「足が痛い」→「あしーいでー」となります。

ただし、「頭が痛い」に関しては、「あだまーいでー」とはならずに、単純に助詞だけを省略して「あだまいでー」となります。

もちろん、長音に変化する助詞は「が」だけではありません。

「を」も普通に長音になります。

たとえば、「俺の目を見ろ」は「おれのめーみろ」となりますし、「手をあげろ」は「てーあげろ」になります。

同様に「気をつけろ」は「きーつけろ」ですし、「端を歩け」は「はじーあるげ」となります。

実際にこれらを発音してみると分かりますが、「を」を省略して長音にすると、「を」がある場合にくらべて口の動きが少なく、本当に発音しやすいことに気がつくと思います。

ただし、朝礼の時の号令である「気をつけ!」は、残念ながら「きーつけ!」とはなりません。普通に「きおつけー!」となります。

元の言葉が推測困難な長音による茨城弁~「でーごのこーこー」

大根のお新香を茨城弁で表現長音を使って省エネ発音をする茨城弁ですが、助詞の省略程度でしたら、もともとの意味をなんとなく推測できます。

しかし、茨城弁のなかには、元の意味がまったく推測できないほどに長音を含めて変化をしてしまった言葉もあります。

たとえば「大根」です。これを茨城弁で表現すると「でーご」になります。

おそらく「だいこん」→「でーこん」→「でーご」と変化したのだと思いますが、それにしてもすさまじい変わりようです。

ちなみに、「お新香」は茨城弁で「こーこ」となりますので、「大根のお新香」は「でーごのこーこ」という言い方になります。

「へーめが飛んでる」も分かりにくい長音を含む茨城弁の1つです。

そもそも「へーめ」って何?と茨城弁を知らない人は思うはずです。

実は、「へーめ」といのは「ハエ」のことです。漢字で書くと「蠅」です。

茨城弁では、虫に対して「め」をつけて表現することがあり、「蚊」も「かめ」といったりします。

「ハエ」の場合は、語尾につける「め」と長音の合わせ技で「へーめ」となるわけです。

動詞にも長音形が使われる茨城弁~「わらー」「あらー」

漫才を見て笑っているお年寄り茨城弁では、物事の動作を表す動詞にも長音形が使われます。

たとえば「笑う」を茨城弁で表現すると「わらー」になります。

「笑うんじゃない!」は茨城弁で「わらーでねー!」と表現します。

最後が「う」で終わる動詞はこのパターンになることが多く、「洗う」も同様に「あらー」になります。

「顔を洗う」は先ほどの助詞の省略パターンとの合わせ技で「かおーあらー」となります。

「える」を含む動詞も長音形になることが多いです。

たとえば「教える」という動詞は「おせーる」に変化します

「早く教えろ」を茨城弁に翻訳すると「はやぐおせーろ」となります。

同じく「える」を使った「見える」という動詞も長音形に変化しますが、「みーる」とはなりません。

「見える」を茨城弁で表現すると、「めーる」になります。「え」が長音に変化をするだけではなく、「み」が「め」に変わってしまうのです。

その結果、「よく見える」という言葉を茨城弁で表現すると「よぐめーる」となります。

名詞にもバンバン使われる長音形の茨城弁~「げーろ」

カエルを茨城弁の「げーろ」で表現動詞だけではなく、名詞にもバンバン長音形のパターンが使われるのが茨城弁の特徴です。

たとえば、代表的な言葉に次のようなものがあります。

「年寄り」→「としょーり」、「大福」→「でーふく」、「額」→「ひてー」あるいは「ふてー」、「庭場」「にゃーば」、「家」→「えー」、「前」→「めー」などなど。

「家」と「前」を用いた「家の前」という言葉を茨城弁で発音すると「えーのめー」となります。

さらに極め付きの名詞として、「カエル」があります。

「カエル」を長音形の茨城弁になおすと「けーる」になりそうな気がしますが、そうではありません。

「カエル」は茨城弁で「げーろ」といいます。

ただし、これは「カエル」が長音化して「げーろ」になったというよりも、ゲロゲロなくから「ゲーロ」なのかも知れませんね。

ということで、今回は長音形の茨城弁を紹介してみました。

茨城弁もなかなか奥が深いですね。

文:護持八平

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